県公式・兵庫五国連邦プロジェクト

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vol.001【わたしがここでパンを焼く4つの理由】なりとパン(丹波)編

美しい自然や歴史を感じられる街、兵庫県・丹波篠山市福住。この土地で、素材にこだわったパン作りをする《なりとぱん》。天然酵母を使ったパンと落ち着いた空間、そして何より伊勢さんご夫婦の優しい笑顔に惹かれ、県外からもお客さんが訪れる人気店だ。
かつて大阪市内に店を構えていた《なりとぱん》が、なぜ福住へ移転をしてきたのか、
その理由を伺った。

理想の水

伊勢さんは自らが理想とするパン作りのため、試行錯誤を繰り返してきた。
そのきっかけは小麦。「パン屋さんならわかると思いますが、パン職人は小麦粉アレルギーになることが多いんです。その原因は外国産の小麦。実は私自身も悩まされていました。でも、国産の小麦を使いだすとピタッと収まったんです。それからパンの原材料にもこだわりました」と話す。安心して食べられる美味しいパン。そのためにはきれいな水が欠かせない。
福住に来るまでは、水を汲みに毎週和歌山まで足を伸ばしたそうだ。いつかは和歌山への移転をと考えていた折、親交が深いマグナムコーヒーの古荘さん※1から福住の話を聞いた。
「話に聞いていたものの、実際に来てびっくりしました。福住の水は私の理想に近かったんです。即決に近い感覚で移転を決めました。」

※1近隣にあるオーガニックコーヒー店のオーナー。なりとぱんにコーヒーの持ち込みもできる。

酵母が活き活きする空気

伊勢さんは、福住の空気にも驚いた。「大阪とは比べものにならないくらい、空気がきれい。それが顕著に現れたのが食材の腐りにくさ。空気でこんなに変わるものかとびっくりしました。ずっと作りたかった天然酵母のパンにも理想的な環境だなと。酵母も生き物なので、きれいな空気だと活き活きするというか、パンの仕上がりが格段に良くなったんです。ここなら美味しいパンができると、心躍りました」。
その結果、大阪時代よりもパンが優しい味わいになったと評判を呼び、食材にこだわりを持つお客さんの来店も増加した。パン作りは大阪時代より手間がかかるようになったものの、営業時間は短縮。ただひたすらパンを作るのではなく、自分たちの時間を大切にしながら、納得のいくパンを作るスタイルに変わった。「そうそう、空気や環境のおかげだと思ってますが、寝起きが良くなったんです。朝を有効に使えるようになり、パンのことを考える時間も増えました」。

損得だけではない人々

福住に住む人々の人情味も伊勢さんの背中を後押しした。「現在の店舗はかなり昔からある古民家がベースですが、改装にあたって地元の左官屋さんや大工さんが心を込めて設計してくれました。ただ改装するだけでなく、住みやすいようにと、使い勝手の良さも考慮してくれて。本来はお願いしていない部分なので、コストや手間を考えたら普通はやらないはず。不思議に思って聞くと、『自分たちが子どもの頃からある家だから愛着がある、だからちゃんとして渡してあげたい』と。そこには損得勘定なんて一切ないんです」。人と人との繋がりを大事にする、福住の人々の優しさが染み渡ったという。

刺激・変化・夢

福住には自分たちの作るもの、生き方にこだわっている人が多く集まる。そんな環境が伊勢さんに好影響を与えた。「マグナムコーヒーさんはもちろん、ランチで提供している野菜の仕入先であるノウカナガイさん※2など、移住するまでは福住という地域がこんなに面白い場所だとは知らなかったですね。自分自身にまっすぐというか、こだわった生き方をする方が多く、僕自身、いろいろな刺激をもらっています」。この環境が、ご主人の性格も変えたと妻の千佳子さんは話す。「大阪に居たころはお店でもほとんど話すことが無かったんです。ただ黙々とパンを作るというか。でも、こちらに来てからはお客さんとの会話を楽しんでいます。主人が本当はこんな性格だったのかと、驚いているところです(笑)」。

※2 農薬・化学肥料不使用で作物を育てる農家。代表の長井拓馬さんは大学在学時に福住へ移住。

そしてノウカナガイさんとは、息子さんも関わりを持つようになったのだという。「次男が服飾の専門学校に通っていますが、コロナ禍で学校が始まらず時間を持て余していました。そんな時に出会ったのがノウカナガイの長井さん。パワフルで熱い人柄の長井さんに惹かれ、一緒に野菜作りをするようになりました。私自身、長井さんの作る野菜はエネルギーに溢れていると常々感じていて、息子も野菜と長井さんから良い影響を受け、成長してくれました」。美しい自然や真っ直ぐな人々、そんな福住の環境が家族の人生を豊かにした。

伊勢さんには、この土地だからこそやってみたい夢があるのだという。「実は小麦を自分の畑で育てたいと思っていて、少しずつ動き出しています。簡単なことではないですが、水も空気も環境もいいこの場所なら、きっとできるはずだと。過程を楽しみながら実現させたいですね」と、嬉しそうに話してくれた。忙しくもひたすらパン作りに没頭した大阪時代。そこから一歩前へ進み、濃密な時間を過ごしているからこその夢。伊勢さんご夫妻ふたりの穏やかな笑顔が、充実した暮らしぶりを物語っている。

今回紹介したパン屋さん

なりとぱん

〒669-2513 兵庫県丹波篠山市福住353
営業時間:10:30~15:30 定休日:水、木

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