県公式・兵庫五国連邦プロジェクト

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vol.007 社会福祉課 東秀紀「“情報を出す”と“限界まで情報を出す” 」

取材日 2020年7月7日 /取材 兵庫県広報専門員 清水奈緒美

日々更新されるコロナウイルスにまつわる数字。患者数、PCR検査数、重症者数…。状況を知り、判断の材料となる大事なものであることは言うまでもないでしょう。更新されるのが当たり前になっていて気にしたことがありませんでしたが、保健所や検査機関など各所からの情報を、公の数字やデータにまとめている人が当然いるのです。今回、社会福祉課の東さんを訪ねました。


まちがったものを出してしまわないか

「3月1日に対策本部ができる前も、HP更新などで関わっていたましたが、疾病対策課の業務がどんどんふくれあがっていって。対策本部が立ち上がり、医療体制は医務課が、医療物資は薬務課が、コールセンターや情報収集は社会福祉課が‥と、分担されていきました」と東さん。東さんが行うのは、患者情報の収集と分析、情報の開示です。陽性患者数や患者情報(年代、性別、居住地、職業など)、PCR検査数、病床数、重症者数などを更新。患者の年代・地域別の割合や、感染経路不明者の割合、入院期間、10万人あたりの患者数など、さまざまな統計を取る。統計の数はどんどん増え、多い時は20以上を更新していたそうです。

「とにかく、1日に40以上とか患者数が増えていった時は統計を取る余裕はなく、『15時までの記者発表資料、急げー』という毎日でした。そういう時は、やっぱり間違いが起こってしまうんです。個人名は非公表がゆえ、更新される患者情報や経過が誰のものか紐付けしにくく、『この情報、この患者さんのものではなかった』ということも(※もちろん、判明後に速やかに訂正)。今は対策本部に応援職員が来て、チェック体制もできています。やっぱり、『まちがったものを出してしまわないか』。その怖さは常にありますよね」。

自治体による差も

公表している数字は、自治体により異なるという。患者数などの主な数字は現在、どこの自治体も出しているが、細かいところを見ると‥例えば、PCR検査数が累計のみのところもあれば、重傷者数や患者の地域を公表していないところも。『あまり細かく分析し過ぎても』と思う時もありますが、やっぱり数字は大事です。憶測でもの言うのは簡単ですが、『~だろう』『~ちゃうか』ではなく根拠が必要なわけなので。そして、割合よりも絶対数を出すことも大事です。割合は分母を変えると変えられてしまうんですよね」。

阪神・淡路大震災。当時と重なる点、異なる点

東さんは阪神・淡路大震災の対応も経験しており、当時と重なる点もあるといいます。「あの時は淡路県民局にいたんですが、発生当日に一宮町役場(現・淡路市役所)へ支援に行ったり、その後も県民局で泊まり込みで対応したりしてました。救援物資が来ると、時間に関係なく、みんなで起きて救援物資や水を運んで…。で、コロナウイルス患者が急増したこの4月は特に、『あれ、もう、こんな時間?』っていう日が続いて、今もあまり思い出せないような感じなんですが。毎日深夜まで、土日なしでもふんばれていたのは、対策本部のみんなも同じように耐えていたからなんです。そこは、阪神・淡路の時と同じですね。当時は被災者も地元の人も行政もみんなで頑張ってましたから」と東さん。一方で、大きく異なる点も。「感染症は目に見えない分、やっかいだなと感じています。地域によっては、患者はまるで犯人扱いされたりしていますよね。人権侵害のようなことが起こっているのは、自然災害とはちがうところです。」

“情報を出す”と“限界まで情報を出す”

「コロナウイルス情報の発信にあたっては、当たり前のことですが、出すべきものはちゃんと出す。公務員の仕事には、“1の仕事を2、3…する”のがいいものと、“1の仕事を2ではなく1きっちりやる”べきものがあると思います。情報発信では、不正確なものを出して、それが広がったり、誤った判断につながったりしてはいけないので正確であること、さまざまな情報を整理すること、それから、どうしても出せない個人情報以外、出しうるものは出すことも、1の仕事をきっちりするということだと思います。それが、県民のみなさんの安心につながると思うので」と東さん。

自治体発表の数字が国へ、関係機関へ、メディアへ行く。私も、例えば“県内患者が最も増えていた時”、こういった言葉を使う際に、数字を根拠にします。累計ではなく日別の数がすぐに分かり、ありがたい。誰がどの数字を見るか分からないがゆえに、出せる限りの数字を出す、整えておく-当然の仕事と言えば当然の仕事だが、情報の受け手のためにできる限りオープンであろうという姿勢は、絶対的な誠意と言えるのではないでしょうか。

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